ほろほろ旅日記2002 8/21-31

前へ


タイ  8月21日(水) バンコク

 昼過ぎに起き出すと、フロントに僕へのメッセージが預けられていた。カンチャナブリーで出会い6月にも会い、以降も連絡を取り合っているウエムラさんからだ。
「昨夜の18:30に来たけどいなかったのでメッセージを残します」……その時間は丁度いたはずだけどなあ。まあいいや。
「今日会いませんか?」
 もちろん行きます。縁がある人とは縁があるもんだなあ。ウエムラさんと会うのはこれで三度目だ。

 バンコクも4月に比べると明らかに涼しくなっているように感じる。今何度くらいだろう。
 ともあれ、せっかくバンコクに戻ってきたのだからと日本人街に行って古本を売り、一冊だけあったチャンピオンをゲット。なんでそこまで漫画にこだわりますか、自分。


 そんなこんなで日も暮れ、いい時間になってきたのでウエムラさんと会うためにカオサンに戻る。待ち合わせ場所は日本料理屋の竹亭。たまの贅沢だ。
 ウエムラさんは前回会った後ラオスとカンボジアに行ってきたそうだが、僕が薦めた中でプノンペンの王宮とビエンチャンは今ひとつだったそうだ。確かに万人向けではなかったけど、残念。この後はマレーシア・インドネシアに行くらしい。もちろんマレーシア情報はお教えしますよ。
 と、ウエムラさんが尋ねてきた。
「次はどこに行くの」
 ……どこなんだろう?
 残り時間とお金を考えると、ミャンマーやバングラデシュ、インドはきつい。パキスタンがだめになったからイランも厳しいし。今回の旅の絶対の目的地はノルウェーのノールカップだから、そこに行くために全ての旅程を考えないといけない。となるとトルコか、中東のヨルダン・シリアか、エジプトか、あたりかなあ……。
 バンコクにずっといても仕方ないし、明日から情報集めに旅行代理店巡りでもしよう。


タイ  8月22日(木) バンコク

 ネット屋に行き、次の目的地候補の情報集め。
 まずは気になっているシリア・ヨルダン関係のビザ情報。ヨルダンはビザなしで行けるようだが、トルコに行くために通らなくてはならないシリアのビザがヨルダンで取れるかどうか、よく分からない。『歩き方』によると取れるようだか、外務省のシリア情報では、原則としてヨルダン在住の人にしか出していないようだ。どっち? ヨルダンに強行したあげくに取れなかったら泣くに泣けないぞ。
 まあ今は中東に行きたいから考えているんではなく、トルコに行く前にどこか寄れないかと考えているだけだからなあ。

 気分転換にシアム(Siam)へ47番バスで本屋巡りに出かける。
 マーブンクロンにも立ち寄るが、行きたかった雑貨屋は今日は閉まっていた。古本屋に寄ってから伊勢丹に。トランクスを探すが一枚350バーツからって高すぎ。露店のTシャツですら言い値で200バーツからなのに。これでは買えない。
 紀伊国屋で『地球の歩き方』トルコと中欧を買う。カオサンで見当たらなかったから、高いけど仕方がない。物々交換しようにも、そんなのを持ってバンコクをうろついている旅行者って存在するのか、という状況だったから。だらだらとぶらつき、六時ごろ宿に戻る。

 うーん、トルコってガイドブックで見る限り、イスラムの入ったヨーロッパみたいなものなのかなあ。もっと泥臭いアジアを見たいんだけどなあ。マレーシアに行かず、大島くんみたいにインドに行けばよかったかなあ。いや、マレーシアは面白かったし、後悔はないんだけど。……とりあえずトルコに行こうかな。トルコを起点に考えると、周辺諸国にすごく行きやすいし。交通の便でも、ビザの取りやすさの面でも。

 しかしここPSゲストハウス、つくづく日本人増えたなあ。春はそんなこともなかったのに。ロビーでたむろしているのが白人集団から日本人集団に変わったもんなあ。そんなロビーで休んでいたら、他の日本人旅行者に
「やっぱアジア横断的なものを目指してるんでしょ? 一気にトルコまで飛んじゃっていいんですか?」
 と言われた。そりゃあそれに越した事はないけど、そうしたがためにノールカップを断念するような事になりでもしたら、本末転倒、悔やんでも悔やみきれないからなあ。今の僕には、アジア横断よりノールカップに行くことの方が大事だから。

 世の中、全てを得ることはできない。何かを得るためには、何かを諦めなければならない。そういうことなんだろう。


タイ  8月23日(金) バンコク

 なんか今日、験が悪いなあ。食堂で注文したのを忘れられて放置されたり、店でお釣りを間違えられたり。
 カオサンのMPツアーに行ってトルコ行き航空券の事を尋ねる。が、もうボロボロ。お盆は過ぎたというのに、混みまくってて取れるものも取れない状態。イスタンブール行きはもちろん、周辺諸国のアンマン、カイロ、アテネをはじめとするヨーロッパ近辺へのフライトも軒並み混みまくっている。MPツアーの森さんの話によれば、ヨーロピアンも今がホリデーシーズンだから混むのは仕方ないんだそうだ。
 この状況下で取れる行動は二つ。キャンセル待ちをするか、取れる限り最短のフライトを押さえておくか。ちなみに、今取れる一番早いチケットは、イスタンブール行きで9/13発。3週間も先だよ……。他の代理店もまわってみる事にして、今日は予約なしで辞去。カオサンとは離れたところにあるアクロスとかも明日以降、行ってみよう。
 もういっそ9月半ば発ということにして、それまでタイかラオスかミャンマーか、東南アジアをさらに練り歩くという手もあるよなあ。どうしようか。


タイ 8月24日(土) バンコク

 だから、早起きの習慣をつけないとやばいってば。
 パッポン通りの近くにある旅行代理店、アクロスに行ってみるが、閉まっていた。次に開くのは月曜日……。
 しまったなあ、ちゃんと朝に起きれていれば間に合ってたのに……。


タイ 8月25日(日) バンコク

 今日も無為の一日。何もせずにぼうっと過ごした。ロビーで電池を充電したくらいか。

 東南アジアを歩いていて、日本人にすら日本人に見てもらえないことにはいい加減慣れたけど、31歳だと言って
「結構いってますね」
 と言われたのは初めてだ。それだけ若く見えているということかもしれないけど、その言い方はないよな……。言った日本人旅行者は大学四年生。うーむ。
 それとは別に腹が立つことに、宿に新しく入ってきたスタッフのおっさん、人の洗濯物を紛失しておいて、にやにやと「ノーモア」ってどういう事だ、おい。代金は先払いしてるんだぞ!?


タイ 8月26日(月) バンコク

 またしても寝過ごした。それもダイナミックに。もう日が傾いてるじゃないか。
 これでは今からカオサン以外の旅行代理店に行っても開いてないな。
 仕方ない。
 今日はMBK(マーブンクロン)に日本の友人に送るシャツを買いに行くだけにしておこう。


タイ 8月27日(火) バンコク

 なぜだろう、動く気にならない。
 確かに飛行機も旅行代理店も好きじゃないけど、ここで手配しない事には先に進めないのに。
 今日も午後からアソーク駅そばにあるというHISを探すが、発見できない。仕方なくパッポンそばのアクロスに行く。が、閉店時刻だった。そういやここのアクロス、4月に道に迷って飛び込んだ時、すごく横柄な対応をされたところだっけ……。仕方ない、日を改めよう。
 しかしこのアクロスの近く、歓楽街のパッポン通り近くという立地のせいか、近くのタイ人兄ちゃん達がむやみやたらと愛想よく「サー、サー」と声をかけて来るなあ。
 ここからだと、宿に戻るには渋滞を避けるためにBTSとボートを使うのがいい。やっぱり雨季、春に比べてチャオプラヤー川の水位も上がっているように感じる。


タイ 8月28日(水) バンコク

 今日はまずHISに行く。確かに噂に違わず安いけど、トルコ行きは往復券でないと買えないそうだ。一月オープン26,500バーツ、六月オープン31,000バーツ。いずれもトルコ航空直行。うーん……。
 一応アクロスにも行ってみるか。おや、今日は感じいいぞ。こっちだとシンガポール経由で保険やなんか、全部込みで31,600バーツか。
 MPツアーだと四万バーツとか言っていたから、安いのは安いなあ。
 できたら片道で買いたいところだけど、復路チケットがあれば向こうの入国審査が楽になるらしいし、帰りにシベリア鉄道を使えなかった時の保険にはなるのか。
 でもなあ。3万バーツって早い話が10万円だからなあ。痛いよ。そんな金持ちじゃないから。それに、アクロスの人に言われるまで気付かなかったけど、帰国予定の12月末って、年末の帰国ラッシュに巻き込まれる可能性も高いわけだし。
 いっその事、問題なく片道券で行けるインドにするかな。デリーまで8200バーツ。パキスタンとイランのビザが問題なく取れるんならそれでもいいんだけどなあ。その場合のパキスタンビザはネパールかバングラデシュで取らないといけないし、イランビザはパキスタンのカラチで取れたとしてもトランジットで限界らしいし。きついやね。ミャンマーの絡みでどのみち飛行機を使うんだから、どっちにせよアジア横断とは言えないしなあ。かと言って、今さら中国に行ってそこから大回りを開始する時間も金もないし。どうしたもんか。

 今日のところは結論が出ず、サイアムから帰ろうとナショナルスタジアム前のバス停で待っていると、日本人の兄ちゃんに
「タイス(タイ人)?」
 と話し掛けられた。バンコクでタイ人なんてめずらしくないのになんで話し掛けるんだろうと思いつつ
「日本人ですよ」
 と応じると、
「やっぱり?」
 と不思議な反応が返ってきた。
 聞いてみると、外見からは日本人だと思わなかったそうだけど、手に持っていた500mlのペットボトルが『おーいお茶』の緑色のやつだったから日本人かなと思ったとか。確かにこの色のはこっちでは見かけないけどさあ。外見からでも日本人だと思ってよ、兄ちゃん。
 で、どうしました? カオサンに行くバスを知りたい? ……ちょっと待て。バスの路線も知らずに一体どうやってカオサンからここまで来たの? 適当? かなわないなあ。

 夜、向かいの部屋の日本人男性二人連れが深夜まで大声で笑いながら話すうるささに耐えつつ眠りにつく。


タイ 8月29日(木) バンコク

 今日もまた、無為な一日を送ってしまった。
 向かいの部屋の笑い声に悩まされて寝付けず、起きたのが昼の2時……いや、他人のせいにするのはよそう。
 今日は気が向かなかったので、出かけずにネットで情報収集するだけにした。夕方にはスコールが来たので宿に戻る。

 今日の収穫:ヨーロッパから帰る場合、片道のエアチケットをブダペストかイスタンブールかアテネで買うのが安いらしい。ロシアに行くなら、エストニアあたりでならバウチャーなしでもロシアビザが取れるらしい。


タイ 8月30日(金) バンコク

 いい加減にチケットを取ろう。ここまでの印象から、アクロスに心を定めて行く。
 片道チケットはもちろん、復路は日本への直行便というのも、復路としてトルコから第三国へというのもダメらしい。やはりバンコクからの往復を買うしかない。お金が痛すぎるが仕方ないか……。目的地をイスタンブールかカイロかで最終確認してもらうが、カイロ行きは10月まで空きがないとのことで断念。イスタンブール行きがここに決定。
 はじめ言われていたシンガポール経由は高いので、他の便がないか見てもらう。見つかった候補は二つ。
 トルコ航空の直行便、9/11発で32600バーツ。
 ガルフエアのバーレーン経由便、9/19発で25400バーツ。
 バーレーンってどこにある国だっけ? ちなみに今のタイビザは9/17まで。早さと安さの間で悩んだけど、8日の違いで7000バーツ(約21000円)も違うとなると、やはり安いほうになるよなあ。トルコ航空は色々と書類がややこしいらしいし、復路の予約変更はキャンセルの場合でも一回につき30ドルかかるらしいし。よし、決めた。
 タイビザも切れることだし、チケットを受け取ったらもう一度ラオスに行ってこよう。ラオスにはいつか必ずもう一度行くと決めていたのだが、その機会がまさか今回の旅のうちに訪れるとは思わなかった。

 それにしても、なんか面白くない。飛行機ってよく「自由の翼」と表現されるけど、今の僕には逆に翼を封じる鎖か籠のように感じられる。
 年末の混み具合を考えて、念のためにチケット(3月オープン)の期限一杯にバンコクに戻る便を予約しておく。日本行きも予約するべきなんだろうけど、帰国前にタイに戻ってくるかどうか、分からないからなあ。
 ……いかん、本当に自分の翼をへし折られた気分だ。先の行動がどうなるか分からないことによる解放感が今まであったことを痛感。これだけチケットを押さえるのに時間がかかったのは、今の自由さを日程の指定という形で失うのが嫌だったからなんだろう。

 このままでいくと、ヨーロッパに渡ったらかなり動きまくりの日程を組まないといけなくなりそうだし、マレーシアでゆっくりした時点で陸路帰国は寝言だったのかなあ。でも、もっと早く動いていたら、どう考えても資金が底をついていたし。うーん、厳しいなあ。

 本屋で買い物ついでにバーレーン情報をチェック。ツーリストが遊びに立ち寄るような国じゃないようだ。


タイ 8月31日(土) バンコク

 無駄な一日を過ごしてしまった。
 昨夜、体調が悪くて寝付けなかった事もあり、昼過ぎまで爆睡。
 今日は土曜日なのでアクロスは午後の早い時間に閉まるので行けず、週末なのでラオスビザを取りに行くこともできず。
 サイアムで本屋巡り、ネットカフェでプロ野球オリックス・ブルーウェーブのライブ中継に浸り、大雨が降ってきたので宿に戻り、一日が終わった。
 あーあ。なにしてんだか。


次へ

トップへ  雲水旅トップへ